「ヤナ・エイロヴァー」って誰?

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先週初めのある日の、朝7時半ごろの町中。

「さわやか」を絵に描いたような、気持ちのいい朝だった。

それが週の後半から天気が崩れだし、まるで梅雨のような天気が続いている。

昨日、テレビで映画『ジェーン・エア』を観た。

シャルロット・ゲンズブール主演の、1996年のもので、チェコ語吹き替え版だった。

子供の頃、日本のテレビで一度観たような気がしなくもないが、少なくとも大人になってから観たのはこれが初めてだった。

チェコテレビ(日本のNHKに該当)には、私が知るかぎり6つのチャンネルがあり、総合、文化、ニュース専門、スポーツなどそれぞれ特化されているが、チェコテレビ1(いわゆる総合チャンネル)とチェコテレビ2(文化チャンネル)では映画の古典的名作や新作を、かなりの頻度で放映していてありがたい。(しかも途中コマーシャルなし!)

最近は外国作品でも、どちらかというと字幕が好まれるようだが、少し前までは圧倒的に吹き替えが多かったらしい。

で、昨日観た『ジェーン・エア』も吹き替え版だったのだが、まずタイトルからして「チェコ語訳」されている。

“Jana Eyrová”(ヤナ・エイロヴァー)と。

英語名の Jane(ジェーン)はチェコでは Jana(ヤナ)になる。近年はあまり流行らないが、30代後半以上の年代には大変多い女性名である。

そして姓の Eyre(エア)だが、チェコでは女性の姓には語尾に ová(オヴァー)を付ける決まりがある。

たとえばよくある名字の Novák(ノヴァーク)さんの奥さんや、娘さんは Nováková(ノヴァーコヴァー)という名字を名乗る。

よって、イギリスの姓である Eyre にも ová を付けて Eyrová、というわけである。

ひと昔前までは、外国人の姓であってももれなく ová が付けられていて、テレビなどで聞くと不自然な感じがしていたのだが、特にここ5年くらいはそれがずい分減ってきた。(もっとも今でもたとえばスポーツニュースなどでは、この習慣が残っている。テニス選手の「ヴィーナス・ウィリアムズ」は「ヴィーナス・ヴィリアムソヴァー」と報じられる。Wはチェコ語ではVと同じ発音になるため、「ィリアムソヴァー」だ。)

果てには純粋チェコ人の中にも、「女性だからといって ová を付けなければいけないというのはおかしい、差別だ!」ということで、わざと ová なし(たとえば Jana Novák ヤナ・ノヴァークのような感じ)で名乗る女性も現れてきた。

さてその『ヤナ・エイロヴァー』を、テレビでゆっくりと味わいながら鑑賞したのだが・・・

19世紀英国の寂寥感ただよう風景と、主人公が厳しい運命に翻弄されるストーリーの中で連呼される、「ヤノ!ヤノ!」の声。

あれには参った・・・

なぜ「ヤノ」なのかというと、「ヤナ」が活用変化したからである。

チェコ語はロシア語やポーランド語、セルビア語などと同じ「スラブ語族」に属するが、名詞も形容詞も動詞もことごとく活用変化する、めんどくさい言語だ。

名詞には全部で7つの「格」があるが、その中に「呼格」というものがあり、「○○さん!」「△△!」と呼びかけるときにも名前を変化させなければならない。

で、「ヤナ」を呼ぶときには「ヤノ!」となるのだ。

最初の「ヤ」にアクセントを置くようなイントネーションなので、「矢野!」とは聞こえないのがせめてもの救いか。

「ジェーン!ジェーン!」・・・情熱をこめて響くロチェスターの声。

まさか、あと一歩間違えれば「矢野さんの物語」になってしまっていたとは。

『ジェーン・エア』は印象深い、よい映画だった。でも観てから3日経った今でも、「ヤノ!ヤノ!」の声が頭から離れない。

やっぱりジェーンはジェーンでいてほしい。

次はぜひ、字幕で観たいなあ。

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Ako

チェコ在住15年を超えた40代女です。海外にいて「出身はどちらですか?」の問いに「東京です」と答えると、なぜかいつもガッカリされるのはなぜなんでしょう。好物はトマトと胡桃ゆべしです。

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